【フェーズ別】スタートアップのマーケティング成功事例13選
「成長を遂げたスタートアップは過去にどんなマーケティング戦略を実行したのだろう」「魅力的な製品はあるが、どのように売り出せばいいのかわからない」と、自社のマーケティング戦略についてお困りではありませんか?
スタートアップが取るべき最適なマーケティング戦略は、企業の成長フェーズやプロダクトのタイプによって、大きく異なります。
本記事では、過去に急成長を遂げたスタートアップの具体的なマーケティング施策や戦略を、成長フェーズ別に計13ケース紹介します。
本記事を読めば、成長を遂げたスタートアップが過去にどんなマーケティング戦略を実行していたのかを知ることができるため、現在の自社に似た企業の戦略アイデアを参考に、自社のマーケティング戦略を立てることができるでしょう。
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そもそもマーケティングとは
そもそもマーケティングとは?
結論からいうと、マーケティングとは顧客が自発的に「買いたい!」と思わせるための仕組みづくり、ということができます。これを裏付ける根拠として、マーケティングの偉人たちによるマーケティングの「定義」があります。
1980~90年代の米国コカ・コーラ社のマーケティング戦略を担ったセルジオ・ジーマン氏は、
“マーケティングの任務は、商品をより多く販売し、より多くの利益を上げることである。人々にあなたの商品をより多く、より高頻度で、より高い値段で買ってもらうこと”
(出典:「そんなマーケティングなら、やめてしまえ!マーケターが忘れたいちばん大切なこと」セルジオ・ジーマン)
という言葉を残しています。
また、「経営学の父」とも言われる米国の経営学者、故ピーター・ドラッカー氏は次のように述べています。
“マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。マーケティングの目的は、顧客について十分に理解し、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることなのだ”
(出典:「マネジメント」ピーター・ドラッカー)
さらに、「マーケティングの神様」とも呼ばれる、フィリップ・コトラーは次のように定義します。
“マーケティングを最も短い言葉で定義すれば『ニーズに応えて利益を上げること』となろう。 (中略)どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること。 “
(出典:「コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版」フィリップ・コトラー)
このように、リードに自社の製品を無理やり売り込むのではなく、顧客が自発的に「買いたい!」と思わせるための仕組みづくりというのが、マーケティングの定義である、と言うことができるでしょう。
以下では過去に急成長を遂げたスタートアップの「顧客が自発的に「買いたい!」と思わせるための仕組みづくり」であるマーケティングの具体的な施策や戦略を、成長フェーズ別に計13ケース紹介します。
導入期
商品の先進性や流行の新規性へ価値を感じる層である、イノベーターにアピールする段階での戦略をご紹介します。
2-1. 弁護士ドットコム(クラウドサイン)
今では電子契約といえばクラウドサインというぐらい知名度の高い、クラウドサイン。現在は50,000社以上が導入し、電子契約利用企業の約80%がクラウドサインを利用するぐらい、業界での圧倒的な地位を築いています。
- サービス内容
電子契約サービス「クラウドサイン」
“当サービスは、事前に内容についてお互いの合意が済んでいる契約書・発注書などの書類をアップロードし、相手方が同意することにより、相互同意がなされたことを示す電子署名が施されるサービスです。また電子署名が施された書類の保管、管理もサービス上で行うことができます。”(公式サイトより)
- 特徴的な施策
製品設計(双方が利用登録する必要をなくした)
クラウドサインでは、相手方がサービス登録せずとも締結可能であることをポイントとし、サービスの提供を開始。IT企業やスタートアップ、個人事業主をはじめとした「紙でのやり取りを煩わしいと感じる方々」を中心に宣伝していきました。
- 戦略実行の結果
相手方が登録不要なため、電子契約の際に登録が「煩わしい」と思われることが少なくなり、導入へのハードルが下がりました。一定数の利用者が生まれると、それからはネットワーク効果により相手の利用者にもサービス認知、導入検討が始まりやすくなりました。
2015年10月のリリースから約2年で導入企業数10,000社突破。2019年10月頃からはテレビCMも打ち、現在50,000社以上が導入。電子契約利用企業の約80%がクラウドサインを利用し、業界No.1へ。
- 考察
今までは電子署名をする際、相手側にも登録が必要なことで契約数の減少を懸念し、潜在的顧客企業も導入を諦めていましたが、クラウドサインが相手側の登録を撤廃したことで導入が増え、電子契約を普及させ、弁護士ドットコムを業界1位の地位に引き上げたと考えられます。
2-2. ベルフェイス
営業に特化したWeb会議システム、bellFaceを開発、運営している企業です。先輩の売り込み方を後から見直せる機能や、オンラインでも名刺交換をすることができる機能、完全オンライン通話ではなく電話を利用していることにより接続が安定するという特徴により普及しました。
- サービス内容
商談に特化した、ツールのインストールや設定不要のオンラインビデオ通話サービス。
- 特徴的な施策
バイラル・クチコミ(大手会社による他社への紹介)
- 戦略実行の結果
営業特化型のBtoB製品なので、バイラル効果がうまく働き、楽天やリクルートなどの大手企業で採用、その企業の紹介により一躍話題に。その後打ち出したCMキャンペーンも成功し、商談で多くの企業に採用されました。
- 考察
営業が強い、もしくは誰もが知っている会社の営業がベルフェイスを使っていれば、それが周りの企業にも波及して「対面営業ではなく、インサイドセールスというものがあるんだな」と納得してもらえるということを知っていたのが成功につながったと考えられます。
それに加え、それらの企業に必死に導入支援を続けたことで、他の部門などを紹介してくれるようになり、その都度サポートをしっかりすることでその輪が広がっていき、継続的に関係が続くようになったという。カスタマーサクセスが売り上げに直結するという格好の例。
2-3. カオナビ
「顔と名前を一致させるためのサービス」という構想を根底に、「次世代型の国産タレントマネジメントシステム」というコンセプトではなく、「顔と名前が一致しない問題を解決する『カオナビ』」というサービスを展開。
- サービス内容
クラウド人材管理システム『カオナビ』
人材情報を一箇所に集め・共有し、人を活かす戦略をみんなで考えられるプラットフォーム
- 特徴的な施策
価格設計。最初は、マスターデータ1件で〇〇円としていましたが、「社員が1,000人になっても、1人につき〇〇円かかるの?」と顧客に指摘され、「マスターデータ1件ごとに課金されるのは嫌なのか!」と気づきました。
続いて、ログインするユーザーアカウント数に応じたユーザー課金制にシフトするも、マネジメント層と従業員の利用頻度の違いから価格や価値にに齟齬が生まれ、頓挫。結局、マスターデータ100件ごとに課金する、今の形に落ち着きました。
- 戦略実行の結果
過去20回以上価格を変えたことにより、自社製品をマーケットフィットさせることに成功。
- 考察
素早くPDCAサイクルを回すことで、価格の設定方法や適正な価格を決めることができたと考えられます。試行錯誤や、顧客からのフィードバックをうまく価格に反映させることができた例と言えるでしょう。
2-4. Clubhouse
2020年に、有名起業家や芸能人などの直接の声を聞けるとして有名になったSNS、clubhouse。初めての大規模音声SNSとして、話題を呼びました。
- サービス内容
音声SNS「Clubhouse」
- 特徴的な施策
サービスの機能削除、招待枠の一人2枠までの制限。一般的なSNSにはあるコメントなどの機能も取り除き、「音声」にだけ集中できる環境を作ったという戦略です。
- 戦略実行の結果
シンプルな機能のみに限定することで、ユーザーの利便性を高め、操作を覚えやすくなりました。コメントや顔出しも不要なので、話すことに集中できることが話題を呼びました。
招待枠を一人2枠までと制限したことも、現在のユーザーが厳選する、コミュニティの民度を上げる人が多く入会する結果につながりました。一人2枠の招待という「限定感」が熱狂を生み、一躍話題になったと考えられます。
- 考察
ほかの参加者が主催者の許可なく発言することができないので、ヤジを飛ばされたり、絡まれたりするおそれがありません。逆に、話が合いそうな人は会話に引き上げることができるなどの、「ホーム感」が魅力となりました。
業界関係者のオフレコトークや有名人同士の即興コラボも次々と生まれて拡散され、「自分も入りたい」と話題になりました。しかし、招待枠制限のせいで、入りたいのに入れない大量の人々が生まれ、その人たちがSNSに「Clubhouseの招待をください!」と続々と投稿し始め、メルカリに招待枠が出品される「事件」がまた人の目を引き、さらに興味を持つ人が増えるというサイクルが生まれました。
おまけに、Clubhouseのトークは、録音禁止のライブ配信なので、聞き逃すことができない上、公開から開始まで数時間ということもざら。フォローしている人が登壇するイベントは公開されれば通知が来て、聞きたくなるように設計されています。
成長期(前期)
商品のディテールや、メリットを重視する層であるアーリーアダプターへアピールする段階での施策をご紹介します。
3-1. Newspicks
国内外のニュースを厳選し、専門家のコメントや世論のチェックもできる、ソーシャルニュースサイト。経済情報に特化しているということも特徴です。
- サービス内容
ソーシャル経済メディア Newspicks
- 特徴的な施策
インフルエンサーマーケティング、SNSマーケティング
情報感度の高い、イノベーターや著名人に直接アプローチしました。そのような影響力のある人がSNSで伝搬してくれるので、更なる宣伝効果も見込めるという、一石二鳥のシステムです。
初期は“ソーシャルでのシェア”をいかにしてもらうか、をKPIとして考えていたといいます。
- 戦略実行の結果
サービス開始から1年間で、ユーザー数30万人突破。話題性を作ることに成功したと言えるでしょう。
- 考察
ニュースサイトの成長には、コメント、SNSでのシェア、そのシェアを見た新規ユーザーの流入のを早く大量に回すことが重要であることより、コメントしやすい導線を設計するために、コメントするユーザーについてデータを元に分析し、サービス内容をチューニングしていったのが効果的。
著名人や業界の専門家には一人ひとり直接アプローチしてインタビューのアポイントメントを取ったというのも成功の要因。
3-2. 識学
最近話題の意識構造学をベースにしたマーケティング理論、「識学」を展開し、経営者にコンサルティングを行う企業です。SMBCなどの有名企業にも採用されており、勢いを見せています。
- サービス内容
マネジメント理論コンサル、講師業
- 特徴的な施策
自身のサービスを「識学の仕組み図」として一部公開、漫画を使ったLPを起用。1〜2週間のスパンで、同時並行は2本まで。PDCAサイクルを早く回すことを意識しました。
- 戦略実行の結果
メソッド公開でリード獲得件数が3倍に増え、漫画を起用したことでリード獲得件数2倍、1万円前後だったCPAが6000円になりました。
最終的には月間獲得リード数10倍、CPAは1/10にするという成果が出ました。顧客獲得ルートの実績として、紹介が約70%(顧客50%+紹介代理店20%)となりました。
- 考察
内容の一部公開や漫画で潜在顧客の心理的ハードルを下げ、顧客に伝えるメッセージを明示、固定化したことで顧客がサービスを利用しようと思うようになったと考えられます。目標は変えず、素早くPDCAサイクルを回すことも重要と言えるでしょう。
3-3. FORCAS
145万社以上の企業データベースを保有し、そのデータを活用した顧客分析や受注率改善をサポートする企業です。少人数のセミナーや大人数のイベントで、経営や戦略についてをレクチャーしています。
- サービス内容
クラウドベースの、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)ツール『FORCAS』
- 特徴的な施策
セミナー主催やイベント主催などの、オフラインマーケティング
顧客企業をTier分けし、個別に声をかけていったり、商談をしたりしました。具体的には、マーケティングチームのメンバー3名で年間100本のイベントを開催しました。
セミナーは優先度の高い企業の担当者向けに、少人数の相談を行い、イベントは優先度の低い企業に、大規模なものを開催してリードづくりを目標に行うなど、ターゲット分けを明確にしました。
- 戦略実行の結果
2019年時点で、前年度の受注実績ベースで契約の6割強がマーケ・営業プロセスの中でオフライン施策を経由して受注に至りました。
- 考察
オンラインのサービスだからこそ、オフラインで、顧客と対面して行うセミナーやイベントが直接的に商談、リード獲得、ナーチャリングへと結びついたと考えられます。
ただ漠然とセミナーやイベントを企画するのではなく、ターゲットを分けて開催するのが肝要であると思われます。
3-4. Canva
オーストラリア発の、1500万人を超えるユーザー数を誇るデザインサイトです。無料バージョンと、著作権フリーの写真が豊富にある有料版の二つから成ります。「世界の全ての人に、デザインの能力を与える」をモットーとして謳う企業です。
- サービス内容
画像編集、共有サービス『Canva』
- 特徴的な施策
Webサイトのデザイン、SEO対応。「instagram story create」「business card design free」「create graduation card」など多様なクエリに対応し、自社サイトが上位に出るようにしています。
Webサイト自体は、言葉をなるべく排除し、実際のデザイン例で「このようなデザインを作ることができる」ということを表示しています。
- 戦略実行の結果
5年間で1000万人の新規ユーザーを獲得し、2020年時点での市場価値は60億米ドルに達しました。
- 考察
SEO最適化と操作の簡単さをアピールするページデザインのおかげで、アクセス数が増えたと考えられます。コロナ禍による自粛ムードや世界的なロックダウンで、オンラインでのデザインコラボレーションが増えたのも成長要因のひとつとして挙げられます。
成長期(後期)
企業がある程度成長していて、アーリーマジョリティにアピールしたい段階に行われた事例をご紹介します。
4-1. SmartHR
飲食店の人事管理ではお馴染みの、クラウドサイン。元々はITにフォーカスしていましたが、大きく方針を変え、圧倒的な成長を手に入れています。
- サービス内容
クラウド人事労務ソフト『SmartHR』
- 特徴的な施策
ITから、飲食や小売業界へのターゲット転換、それに合わせたCM打ち出し
飲食・小売の方が業界の特性上、アルバイト従業員の数が多く、入退社する頻度が高い上、それに合わせて書類手続きや管理することが多いので、SmartHRが提供できるコスト削減が大きいと考えたためです。これに合わせてテレビ番組『MOCO’S KITCHEN』で飲食のイメージがある速水もこみちさんをCMに起用しました。
- 戦略実行の結果
それまでは、ITベンチャーを中心に、従業員数が1人から10,000人の企業との契約が多かったですが、プロモーション実施後は、飲食・小売業を中心に20,000人から数万人規模の企業との契約が増えました。
- 考察
飲食業の方が大企業が多く、店舗型ビジネスが多く、しかも一店一店が離れているので、従業員の人事管理が大変だというところに目をつけたのが成功のきっかけと考えられます。
しかも、大企業であることで、ロゴパワーが強く、一般的によく知られているので、導入とともに認知を広げられるというメリットもあります。
4-2. ラクスル
テレビCMなどで見る、ネット印刷の代名詞。ネットで手軽に印刷できることが反響を呼びました。
- サービス内容
ネットで『印刷』を提供するサービス。販売をネット化することで、営業による中間マージンをなくし、小ロットであっても、『印刷』を手軽に安く注文できるようにした企業です。
- 特徴的な施策
マーケティングへの圧倒的な増資(当時の調達学79億円のうち、50億円をマーケティングに使った)。テレビCMを、ローカル番組で低価格で製作し、キーワードなどで実験して、どのようなCMが一番効果的かを確かめてから、全国放送をするという、デジタルマーケティングのような手法をとるという戦略です。
- 戦略実行の結果
投資をすればするほどCPAが下がっていきました。マーケティング投資額は10倍以上に増やしましたが、CPAは大型投資のスタート時点よりも半分以下に抑えられています。
投資によって新規利用者数もリピート数も増加した結果、1件当たりの獲得効率が上がっていきました。また、『ネット印刷』業界の検索キーワードはほとんど伸びませんでしたが、『ラクスル』というキーワードの検索数は20倍くらいになりました。
ネット印刷サービス=ラクスルという純粋想起を作れたこと、比較されずに指名されるようになったことで、ブランディングが成功したと言えるでしょう。
- 考察
まず回収期間を設定し、徹底的にマーケティングにアクセルを踏む手法は、リピートのあるBtoBビジネスにおいてラクスルが起こしたイノベーションだと言えるでしょう。
この転換が成功したのは、マーケティングが会社のイチ機能に留まっていたのではなく、経営の中枢にあったからではないか、と考えられます。
マーケティングは、プロモーションをやるだけではなく、サービスやプロダクト自体に介入しながら、そのものを開発しようとするものだという発想の転換が必要だと言えるのではないでしょうか。
4-3. フロムスクラッチ
おぎやはぎさんが出演していたCMで、話題を呼んだb→dash。ノーコードによる、操作の簡便性を売りにしている企業です。
- サービス内容
MAツール「b→dash」
ノーコードで誰でも扱いやすい操作性が魅力のMAツールです。テンプレートも豊富で、マーケティング業務に必要な機能が全て揃っているので、これ1つで完結ということを売りにしています。社内のデータを有効活用してCVRを向上させたい企業、3万以上の顧客データを扱う企業に多く利用されています。
- 特徴的な施策
エグゼクティブ層に最もよくアピールできる、タクシー広告。受注に至らなかった企業の意思決定者や担当者にヒアリングすると、「b→dashは聞いたことがないので、今回選定からはずした」「無名ツールのb→dashで失敗すると責任が重くなる」という認知度の壁があることが明らかになりました。そこから、意思決定者のb→dash認知を獲得すればコンペ勝率も向上するはずだ、と考え、役員や部長、経営層といった意思決定者をメインターゲットにしました。
- 戦略実行の結果
・新規獲得リード数 【約7.2倍増】
・代理店紹介数 【約10.7倍増】
・サイト来訪数 【約13.3倍増】
・アポ取得数 【約5.3倍増】
・コンペ勝率 【約1.7倍増】(【スタートアップ必見】すべて見せます!!! b→dash大型プロモーションの裏側 ~全体設計と成果編~より)
- 考察
導入検討企業の担当者がb→dashを推奨するも、役員や部長など意思決定者が他のツールを選んでしまい、受注に至らないケースが頻発していたことがヒアリングによってわかりました。なので、意思決定者のb→dash認知を獲得すればコンペ勝率も向上するはずだ、と考え、役員や部長、経営層といった意思決定者をメインターゲットにしたことが、成功の一番大きな原因であると考えられます。
プロモーションのメインターゲットである「代理店の担当者の方々」「意思決定者」に最もリーチできる広告媒体を考えた結果、タクシー広告を選択。「役員や部長といったエグゼクティブ層はタクシー利用が多い」、「代理店担当者の方々は移動にタクシーをよく使う」のではないかと考えタクシー広告を積極的に採用しました。また、「乗車時に流れるためCMの強制視聴性が高い」という点もタクシー広告の利点に挙げられます。
4-4. ZOZOTOWN
代表の前澤さんも話題作りに一役買っている、若者に特に人気のファッションサイト、ZOZOTOWN。1826ブランドが出店しており、ファッション業界では随一の大きさを誇ります。
- サービス内容
ファッションに特化した、服のネットショッピングサイト。
- 特徴的な施策
CRM・ダイレクトマーケティング。1時間あたり140種類以上のパーソナライズドメールを自動的に出しわけるようにしました。(データ上で購買行動の変化が見られた顧客を1時間ごとに検出して、その動きのニーズに合った最適なオファーをメールでお届け)
また、「ツケ払い」と呼ばれる、最高で2ヶ月後に、クレジットカードかコンビニで支払いできるシステムを作りました。
- 戦略実行の結果
ダイレクトマーケティングに取り組む以前は、DMによる売り上げは25億円程度(売上の約10%)でしたが、2013年では8倍の200億円(売上の約25%)にまで拡大し、総売り上げの中での非常に大きな割合を占めるようになりました。
ツケ払いを実行した結果、中学生・高校生も含む、クレジットカードを持たない若年層からの圧倒的な支持を得られるようになり、未回収リスクも無くすことができました。
- 考察
前澤社長の企画力もあって、ZOZOTOWNは個性的な戦略(ツケ払いなど)や、2億円分の商品無料キャンペーンなどでも大きな成功を収めました。また、DMも広告ばかりではなく、服の手入れ方法や季節、買った商品に合わせたおすすめなどの、営業以外の要素を入れたことで、顧客の信頼を得られたと考えられます。
4-5. GrooveHQ
海外の中小企業で、社員の、顧客に対するサポートをするための一貫したツールとして重宝されているGrooveHQ。共有受信箱、ライブチャット、インテグレーションなどの機能で、ヘルプデスクには欠かせないソフトウェアとなっています。
- サービス内容
スマホ・PCでオンラインライブチャットによる顧客サポートを簡単提供する包括的プラットフォーム。
- 特徴的な施策
顧客の離反理由を探り、それに合わせたDMを送りました。離反する顧客は、一つ一つの作業を行うのに3分以上かかっているという結果が、Google Analyticsをはじめとしたツールによる、顧客の観察によって明らかになりました。そうやって時間がかかり、作業を実行するのに苦戦している顧客にすかさずカスタマイズされたDMを送ることで、作業に関するサポートをし、かつ離反を防ぐという戦略を取りました。
- 戦略実行の結果
離反率が当初の4.5%から、1.6%まで下がりました。また、顧客の満足度が上がりました。
- 考察
顧客の離反率と作業時間の関係に着目したことが、顧客離れの理由を突き止める一番良い行動だと考えられます。サポートを入れることで、顧客の満足度をあげることと、離反率を下げることの二つの目標を同時に達成できるという目標を同時に達成できたと言えるでしょう。
終わりに
今回は、初期、黎明期、成長・転換期、と企業のフェーズにあった成長戦略を、それぞれに分けてご紹介しました。これらの中から、各戦略の特徴を確認することで自分の企業に最適な成長戦略を見つけることができるでしょう。これを応用して、ご自分の戦略を立てることで、企業の圧倒的な成長につながることでしょう。
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