「OPEN PITCH Vol.4」優勝者 株式会社weCAN 高橋佑生に迫る

「OPEN PITCH Vol.4」優勝者 株式会社weCAN 高橋佑生に迫る

皆さんは、パソコンを使う毎日の中で姿勢が原因で肩こりや腰痛等で苦しんだ経験はないでしょうか?

皆さんの頭を支えている頚椎のカーブは人類の歴史とともに生み出されてきました。正常な首の頸椎はゆるやかなカーブになっており、横から見た場合には「く」の字状、緩やかな「C」の字状の形をしています。 しかしながら、昨今では首の頸椎部分が真っすぐになってしまった状態であるストレートネックに苦しんでいる人々が増えています。

新型コロナウイルス感染症が世界中で広がり、テレワークや授業のオンライン受講など様々な生活の場面がパソコンと向き合う時間に置き換わった現在では、新型コロナ以前よりもこのようなストレートネックで苦しむ人々は急増傾向にあるでしょう。
そんなストレートネックに自身も苦しんだ経験のある株式会社weCAN代表取締役高橋佑生氏は、ものづくりを通して、現代病の1つであるストレートネックを解決しようとしています。

なぜ株式会社weCANを起業したのか。株式会社weCANはどういった未来を描くのか。高橋氏ご本人に取材させていただきました。

起業のきっかけは?

自分の作ったもので起業するのが夢だった

高橋氏は自分の作ったもので起業したいという夢を描き、東北大学に進学した。アプリケーションやプログラミング等の現代技術を用いることで健康上の課題を解決できるのではないかと考え始めたのがきっかけに、学生向けのMEMSデバイスを用いたアプリケーションを提案し、試作した成果を競う国際ものづくりコンテストであるiCAN(International Contest Innovation)に出場していた。

その大会を通して、高橋氏のチームであるnatural scienceチームは数々の入賞実績を残した。その大会で2017年に世界1位、国内1位を獲得したのが、現在高橋氏が製品化に向けて注力している美姿勢メガネである。

そんなものづくりが大好きな高橋氏も、実は小学校5年生の頃、ゲームをやっている最中の姿勢が原因でストレートネックが原因で肩こりに悩み、接骨院に通っていた過去がある。
そして、高橋氏のチームnatural scienceが小学生にものづくりを教えている際、その時の小学生の姿勢を見た時に当時の自分の苦労した記憶が重なり、危機感を得た。それが今の高橋氏の美姿勢メガネを製品化するための大きな原動力となっている。

株式会社weCANの理念と目指す世界観とは

科学・技術の地産地消を実現したい

株式会社weCANの理念は、iCANなどで発表した作品の製品化を目指す製品化を通じて、後輩たちを育成・支援する自分ひとりの成功だけでなく、チャレンジしたみんな(we)が成功することであり、それを願って株式会社weCANと命名した。

高橋氏のiCANのチームであるnatural science、そして株式会社weCANが目指すもの、それは科学・技術の地産地消を可能にする世界線である。

まず、アイデアを種にするため、natural scienceとして、小中学生を対象に科学・技術講座を開催し、科学の基礎力と想像力の育成を図り、同時に受講生とチームを組み、試作品を制作し、大会出場を果たしてもらう。
また、大学生を対象には、東北大学(東北大学マイクロ総合研究開発センター・東北大学スタートアップガレージ)と共同で育成を行う。

そして、そのアイディアの種を発芽させるため、東北大学をはじめとする研究機関を土壌とし、共同研究・開発、監修、特許取得、論文化、そして学術発表をこなう。
最後に、株式会社weCANでアイデアを開花させ。研究成果の製品化、製造、そして販売で上がった利益を教育に再投資するという好循環を回すことで、仙台、そして宮城にこのような世界を実現するという。

「美姿勢メガネ」とは

良い姿勢となる形状を生み出す新発想のIoTアプリ

そんな世界を目指す株式会社weCANが手掛けている「美姿勢メガネ」は、メガネ内蔵センサーが座位の姿勢と背骨の形状を測定し、良い姿勢となる形状を生み出す新発想のIoTアプリである。
基本機能としては、
座位姿勢「背骨健康」チェックモード
座位姿勢改善モード
があり、メガネが日々の座姿勢の背骨形状「背骨健康度」を推定し、累積データから疾患リスクを改善する。具体的には、姿勢が悪くなるとパソコンの画面が赤くなり、ユーザーの姿勢が自発的に良くなるという仕組みである。

現在は東北大学医学部との共同研究を行っており、また上市に向けてさまざまな外部機関と開発、生産、販売体制を整えるための提携をしている。今年の2022年には法人向けの販売を始める予定だと高橋氏は言う。最終的には、医療機器として販売するのを目標としている。

株式会社weCANの取り組みとして、さまざまなものづくり開発をしているが、その中でも美姿勢メガネだけに注力しているのではない。現在、全ての製品の研究開発を行っており、その中でも一番進んでいるのが、美姿勢メガネである。美姿勢メガネの開発やプロダクト化に向けた取り組みが一番進んでいるので、そればかりが目立ってしまうが、高橋氏は全ての製品化を目指しているエネルギッシュな学生起業家である。

OPEN PITCH後の1年で苦労したこととは

学生起業家だから、、と取引先に交渉や納期厳守の点で舐められた

そんな多動力に満ち溢れた高橋氏も弊社、OPEN VENTURES主催のOPEN PITCHに出場した後、今年にかけて苦労したことがあるという。
それは、学生起業家だからと言う理由で取引先に交渉や納期厳守の点で舐められてしまうところだと高橋氏は言う。

外注先と納期等が原因で揉めた際、学生起業家だから少しぐらい遅れても大丈夫でしょという取引先の思い込みでなかなか守ってもらえず、苦労したのが去年から現在にかけての苦労である。
そのような交渉面において、社会人経験のない学生起業家の場合は苦労している方が多いのではないかと高橋氏は考える。

また、取引先や株式会社weCANのメンバーのモチベーションを高める仕組みを作ることにも苦労したという。
現在は、提携先であるNPO法人の方と数々のミーティングを重ねながら、相手のモチベーションを高めるための戦略・戦術を練っている。
現在はチームメンバー全員が無給で働いているため、それでも働き続けるための原動力である情熱をいかに高めてもらうための仕組みを作ることが最重要課題と述べる。

OPEN PITCHでの経験から起きた変化とは?

ビジネスとしての解像度を高めるきっかけになった

OPEN PITCHに出場した後の取り組みを高橋氏に聞いたところ、解像度をテーマにフィードバックを多くもらったので、それを期にユーザーテスト等でユーザーの反応を重視するようになったという。
まだ美姿勢メガネのプロダクト自体を実際に使用してもらうマーケティングテストを行っているわけではないが、ピッチコンテストや外部での出演を期にいただく反応やフィードバックからユーザーの声を聞いているという。

株式会社weCANの現在

戦略的提携を組み、事業のスケールへ

現在、高橋氏の会社の体制としては、ベンチャーキャピタル(VC)と話も進めているが、プロダクトを出した時のマーケットの反応を見ないと大規模出資は難しいと言われている。
事業会社との提携は、現在は株でのやりとりではなく、戦略的提携の手段として資金提供のしていただいているが、市場の反応を見ることを対価に交渉が進んでいるところだ。
多くのスタートアップとの大きな違いは、ベンチャーキャピタル(VC)からの出資をあまり考えていないところだと高橋氏は考える。

現時点では、資本政策の展望としてベンチャーキャピタル(VC)からの出資は考えておらず、資金のみのやりとりで戦略的提携を組み、事業のスケールを行こうと考えている。
営業としては、直接行っているわけではなく、テレビ等の外部での出演でインバウンドによるご連絡がほとんどである。
そのようにお声のかかった企業としてはIT企業や保険会社、そしてメーカー等のさまざまな分野の企業から声がかかっている。

熱意と今後のご展望

生きた証を残せるような人生へ

このような実行力や実現力がある高橋氏のモチベーションの源泉はなんなのか。それは高橋氏は、将来いつかお札の顔になれるような生きた証を残せるような人生を歩みたいと考えているからだ。
そのためには、現代の日本にある課題、そして世界にある課題に向き合う必要があり、それらをものづくりの観点から解決していきたいと言うのが高橋氏のモチベーションである。

高橋氏の今後の展望として、自分がカタチにしたいと思うこと、何かを解決したいと思う原体験からビジネスにつなげていく。
それを大切にしていきたいと述べている。そうすることで、自分自身も周りも経験を豊かにして、ビジネスを大きくしてくことに注力していきたいと考えている。